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コラム

2025.02.25

ひとり親家庭の実態調査-子どもの一時預かりサービスに関する実態調査最終報告書|ひとり親家庭の「いざ」というときに必要な支援とは?-

本調査は、ひとり親家庭のリアルな声に耳を傾けながら、社会全体で子どもを支えるために必要な「一時預かりサービス」の現状と課題を明らかにし、今後の支援策やサービス向上の方向性を示すことを目的としています。とりわけ、本記事をお読みいただきたいのは、以下のような方々です。

  • 行政機関の皆さま
    ひとり親家庭支援に携わる自治体担当者や国の政策担当者に向けては、調査から浮き彫りになった課題を共有し、今後の制度設計や補助政策の参考にしていただくことを期待します。
  • NPOや民間の支援団体、企業の皆さま
    子ども向けサービスや支援活動を行う方々には、ひとり親家庭の「リアルな声」をビジネスや社会貢献活動に活かしていただき、より柔軟かつ利用しやすいサービスを一緒に創っていただきたいと考えています。
  • ひとり親の方々
    同じ悩みを持つ保護者の生の声に触れることで、他の方がどのように問題を乗り越えているのか、活用できる制度やサービスにはどんなものがあるのかをご確認いただき、自分に合ったサポートを検討するきっかけにしていただければ幸いです。

本調査を通じて見えてきたのは、ひとり親家庭にとって「子どもを一時的に預かってもらえる場があるかどうか」が、仕事継続や心身の安定、さらには子どもの健全な発達にも大きく関わっているという事実です。忙しさや経済的なハードル、周囲に頼れる人がいない孤立感など、ひとり親家庭が抱える問題は多岐にわたります。そんななかで、少しでも安心して預けられる選択肢があれば、生活の土台を安定させられるのではないでしょうか。

それでは、実際に全国のひとり親家庭にアンケートを行った結果や、自由記述で寄せられた声を基に見えてきた状況、そして具体的な課題と提言をご紹介します。


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目次

本調査の概要

1-1. 調査の背景

少子高齢化が進む日本社会では、家庭のあり方が大きく変化しています。特に、「ひとり親家庭」の数は年々増加しており、共働き世帯の増加や核家族化の影響もあって、子育てを外部のサービスや地域コミュニティで支える必要性が高まっています。しかし、いざ子どもの体調不良や保護者自身の病気、仕事の都合、勉強の予定などが重なると、子どもをどこかに預けたくても受け皿が見つからないという声は少なくありません。

とりわけひとり親家庭では、育児と仕事を一手に引き受けなければならず、自身の体調不良時ですら「休めば収入が減る」「休むと職場に迷惑がかかる」といったジレンマを抱えがちです。近年はコロナ禍以降のリモートワーク拡大など、新たな働き方も普及しましたが、「フリーランスで働いているが子どもが熱を出すと仕事がストップして収入が激減してしまう」「休暇を取りづらい風土の職場でどうしようもない」など、様々な実態が見えてきています。

そうした背景のもと、一時預かりサービスは非常に重要な「セーフティネット」として期待されています。本調査の目的は、ひとり親家庭を中心に「どのようなニーズがあり、どんなサービスが使われていて、どこに課題があるのか」を把握し、そこから有効な支援策を検討するための基礎資料を提供することです。

1-2. 調査の目的

  1. 子どもの一時預かりサービスのニーズ・利用実態を把握する
    行政や民間企業、地域ボランティア、NPOなど多様な主体が提供する「一時的に子どもを預かるサービス」について、利用者が評価するポイントや「ここが利用しづらい」と感じている課題を洗い出します。
  2. ひとり親家庭が一時預かりを必要とする場面を明確化する
    急な残業、通院、休息・リフレッシュなど、多岐にわたる「預けたい理由」や困難度、その頻度を把握します。合わせて公的支援制度や民間サービスへの認知度も確認し、支援策と利用者ニーズのギャップ(ミスマッチ)を浮き彫りにします。
  3. 調査結果を踏まえた課題整理と改善策の検討
    現在の子ども預かりサービスがどのような問題を抱えているか、具体的に提示します。料金、運営時間、周知不足といった観点から解決策を探り、行政や企業、NPOが連携して構築できる理想的な支援モデルの方向性をまとめます。

1-3. データ収集

  • 対象者:全国のひとり親世帯
  • 調査期間:2024年12月1日~12月9日
  • 調査方法:ひとり親限定のトークアプリ「ペアチル」経由のアンケート
  • 有効回答数:298件
  • 主な調査項目
    • 基本情報:回答者の性別、年齢、子どもの人数・年齢、就業状況、居住地域、世帯年収、ひとり親になった経緯、養育費の受給状況など
    • 子育ての現状:普段利用している子どもの預け先、習い事や課外活動への参加状況、月々の子育て費用など
    • 一時預かりサービスの認知・利用状況:子どもを預けたいと感じる場面や頻度、実際に利用しているサービス、サービス選択時の重要ポイント、料金の許容度、送迎手段、期待する効果など
    • 公的な支援制度の認知度:行政や公的機関が用意している制度・施設の認知度、利用しない理由など

1-4. アンケート回答者の属性

本調査の回答者属性が以下となります。

  • 性別
    シングルマザーが約9割、シングルファザーが約1割程度。
  • 年代
    30代が最多、次いで40代、20代も一定数。
  • 子どもの人数
    1人が最も多く、2人以上を抱える家庭も少なくない。
  • 就業形態
    正社員、パート・アルバイト、フリーランスなど多様。
  • 世帯年収
    200万円以下、200~400万円が多い傾向。
  • ひとり親になった経緯
    離婚、未婚、死別などさまざま。
  • 養育費の受給状況
    「受け取っていない」または「途中で途切れた」というケースも多い。

これらの背景には、「シングルマザーが離婚後、実家を頼れない」「シングルファザーが慣れない家事・育児と仕事に追われている」といった状況が散見され、特に親族からのサポートが得にくい世帯ほど、一時預かりへの関心が高い可能性を示唆します。

(最終報告書をPDFでご覧いただきたい方は以下のボタンをクリックしてください。)

本調査のお問い合わせはメールかフォームにてよろしくお願いいたします。

E-mail : info@parchil.org

Form : https://forms.gle/oqg9gX8LVyZKDrEC6

ひとり親にとっての“いざ”って?――誰もが直面する子育ての緊急事態

子どもの熱、突然の残業、自分自身の体調不良や冠婚葬祭など、日常のなかで「子どもを預けたい」と思う瞬間は、どんな家庭にも突然やってきます。しかし、ひとり親家庭においては頼れる配偶者がいないため、この“いざ”の瞬間がいっそう深刻な問題へと発展しがちです。休みづらい職場環境や慢性的な人手不足、実家との距離や経済的負担など、複数の要素が絡み合うほど「どこにも預けられない」ジレンマが大きくなるのです。本調査では、一般社団法人ペアチルが実施したアンケート調査をもとに、子どもの一時預かりサービスがどのように活用され、どんな課題があるのか、さらにそれを踏まえた解決策の可能性を探っていきます。

子どもの一時預かりサービスに関する実態調査ってどんな方法?――ひとり親向けトークアプリ「ペアチル」で集めたひとり親の生の声

今回の調査は、ひとり親向けトークアプリ「ペアチル」を通じて、2024年12月1日から12月9日まで実施されました。有効回答数は298件。母子・父子を問わず、全国各地で子育てをしているひとり親に参加いただきました。アンケート項目は「ふだんどこに預けている?」「一時預かりサービスの利用経験は?」「公的支援の認知度は?」など多岐にわたり、自由記述欄では切実な声が数多く寄せられています。このリアルな声こそが、本調査の出発点です。

まずは子どもの普段の預け先――保育所?祖父母?それとも“使わない”?

日常的な預け先としていちばん多かったのは保育所・幼稚園(47.7%)。続いて祖父母・親族(34.9%)、学童保育(24.5%)と続きます。一方で、ファミリーサポート(2.3%)やベビーシッター(2.0%)など“専門の一時預かりサービス”は極めて低い利用率でした。ここからは、ひとり親家庭の多くが公的保育や親族の協力で何とかしのいでいる一方で、本格的な一時預かりサービスには手を伸ばせていない現実が浮かびあがります。また、子どもをどこにも預けず、常に自宅で対処している層(約21%)も一定数存在。こうした層ほど、急なトラブル時に強い負担を抱える傾向があるといえるでしょう。

お金の悩みは常に付きまとう――“月3万円未満”が最多の子育て費用

月々の子育て費用に関しては、3万円未満と答えた世帯が40.1%と最も多く、次に3~5万円(30.3%)が続きます。5~7万円や7~10万円、10万円以上という家庭もあるものの、ひとり親家庭全体の平均収入を考慮すると、習い事や塾といった課外活動にかかる費用を捻出するだけで精一杯という声も珍しくありません。自由記述では「子どもの可能性を広げたいから習い事をさせたいが、そんな余裕がない」「家計をやりくりするので精一杯」という切実な意見が目立ちました。

“ちょっと休ませて”の大切さ――一時預かりを必要とする場面と頻度

アンケートで「子どもを一時的に預けたいと思うタイミングは?」と尋ねたところ、最も多かったのは「心身の疲労を感じたとき」(72.8%)。続いて「自分の通院・健康管理」(61.7%)、「趣味や息抜き」(55.7%)となっています。保護者自身が休む時間を確保できないことは、長期的に見て深刻な影響を及ぼしかねません。ひとり親の場合、仕事と家事と育児のすべてを一手に引き受けているため、月に2~3回でも数時間預けられるだけで心身の疲労度合いが大きく変わると考えられます。それでも実際は「預け先がない」「費用が高い」といった理由から、自分を後回しにしてしまうケースが少なくないのです。

実際の利用率はどれくらい?――“専門サービス”に踏み切れない壁

一時預かりサービス(ファミリーサポートやベビーシッター、認可外保育施設など)を使ったことがあると答えたのは全体の28.2%で、約7割が未経験という結果でした。料金面や信頼面に加え、「どのように探せばいいかわからない」「急に利用したいときは予約が取れない」という声が自由記述で目立ちました。中には「ベビーシッターを試したいけど、スタッフの資格や性格が未知数で不安」「ファミリーサポート登録のハードルが高い」といった意見も。結局、親族に頼れない状況に陥った場合、“我慢”してしまうひとり親が多いのが現状です。

急な残業はどうしてる?――56.7%が“仕事を断る”切なさ

「急な残業が発生したとき、どう対処していますか?」という問いに対し、もっとも多かった回答は「残業を断る」(56.7%)でした。続いて「親族に預ける」(39.9%)が上位で、一時預かりサービスの利用はわずか3.7%という低水準。この数字が示すのは、職場に迷惑をかけたり、収入減につながったりするリスクを承知のうえで、仕事を断るしか選択肢がないひとり親が大勢いるという事実です。利用したくても対応可能なサービスが近くにない、夜間や残業の時間帯をカバーする場所がほとんどないなど、構造的な問題が垣間見えます。

料金はどこまで許容?――1時間1,000円が“分岐点”

料金面については「1時間あたり500円未満」や「500~1,000円」を希望する回答が多く、これらを合わせると76.5%に達します。一方、1,000円以上になると利用をためらうひとり親が急増し、「ちょっと高いと感じる」「頻繁には無理」という声が続出。また、公的補助があれば「利用したい」「利用頻度を増やす」と答えた世帯が91.9%にも上り、経済的支援の有無がサービス利用を左右している状況が浮かびあがっています。

送迎サービスへの期待――約8割が“移動負担を減らしたい”

車や徒歩、自転車、公共交通機関など、子どもを預ける場所までの移動手段は様々ですが、いずれにしても15~30分以内を希望する保護者が大半でした。「車が使えなければ不便」「駐車場がなければ利用しにくい」「子どもだけで通うには危険」といった問題点があり、特に地方では車以外の選択肢が乏しいため、送迎サービスの需要が一層高まります。実際、アンケートでも送迎支援の充実を求める声が79.5%に達しており、地理的ハンデを解消するうえで重要なポイントだと言えるでしょう。

公的支援を知らない!?――“情報不足”が最大の落とし穴

行政やNPOなどが運営する公的支援制度は、実は多岐にわたります。ところが、約47.3%が「情報不足」で利用しないと回答し、そもそも存在を知らなかった層も25.2%に上りました。さらに「手続きが煩雑」「利用条件が厳しい」という意見も多く、「自分には関係ないだろう」とあきらめてしまう保護者が少なくありません。誰もが使いやすいよう手続きを簡略化し、オンラインでの申し込みや情報検索を促進する体制づくりが求められています。

心配なのは信頼性――“この人に預けて大丈夫?”の不安

ファミリーサポートやベビーシッターといった仕組みを敬遠する理由としては、「どんな人が来るのか」「資格や経験は大丈夫か」「子どもが馴染めなかったらどうしよう」といった不安が大きく作用しているようです。実際に、「一度利用した人はリピートしやすいが、新規利用のハードルが高い」という特徴が浮かび上がりました。信頼感を高めるにはスタッフの教育や認証制度の導入、利用者同士が口コミを共有できる仕組みなどが欠かせません。

忙しすぎる国・行政の窓口――“平日昼間だけ”の壁

ひとり親家庭ほど平日の昼間に役所へ出向く余裕がない場合が多く、支援策を知っていても申請手続きまでたどり着けないというケースが珍しくありません。特に地方自治体では「窓口は月~金の9時~17時」「電話予約は平日のみ受付」といった条件が当たり前で、保護者の就労状況をまったく考慮していないとの批判もあります。オンライン申請や夜間・休日の相談窓口を充実させる必要性が、調査を通じて改めて浮き彫りになりました。

“突発ニーズ”こそが本質――子どもの体調不良や残業にどう備える?

一時預かりサービスの価値が最も高いのは、やはり突発的なトラブルに対応できるかどうかです。「前日までに予約しないと使えない」「年齢制限がある」「病児保育が近所にない」となると、せっかくのサービスがあっても役に立たない場面が多くなります。親が働きやすくするためには、当日予約や夜間対応など、突発時にこそ利用しやすい仕組みを整える必要があります。

アンケート自由記述に見る“リフレッシュの大切さ”

「少しの間だけ子どもを預けてリフレッシュできる時間があれば精神的に楽になる」「24時間一緒で休まる暇がない」といった声も多く、心身の健康維持にとって“一時的なヘルプ”がどれだけ大切かが示されています。ひとり親が心身のバランスを崩すと、家庭内の雰囲気や子どものメンタルにも影響するため、定期的な“親の息抜き”が長期的には子どもの健全育成にも繋がるのです。

低価格のために必要なこと――公的補助?企業補助?NPO連携?

「料金がネック」という回答が目立つ以上、公的支援による利用料補助や、民間企業が従業員向けに保育費を助成する仕組みなどを拡充することが急務です。自治体ごとの財政状況や優先順位でサービスの有無や予算規模に差が出やすいという現状を踏まえ、国レベルでの一律補助も検討すべき段階に来ています。NPOやボランティア団体との連携で運営コストを抑える事例も見られるため、地域全体で支え合うシステムづくりがカギと言えそうです。

送迎サービスがあれば人生変わる?――外出しづらい親への朗報

送迎サービスがあるだけで「車がなくても、免許がなくても預けられる」「仕事の行き帰りに預ける負担が減る」といったメリットが生まれ、特に体の不自由な親や自転車移動しかできない家庭にとっては劇的な変化となります。地方自治体の中には、巡回バス形式の送迎を導入して成功している事例もあるため、こうしたノウハウを全国へ広げることでアクセス障壁を大幅に下げられる可能性が高いでしょう。

スタッフが見えない不安――資格や研修制度の“見える化”を

「お金を払うのに、スタッフがどんな人か事前に分からないのは怖い」という意見からは、信頼性の可視化が重要であることがわかります。国や自治体、民間企業が連携して研修を義務づけ、合格したスタッフには証明書を発行する仕組みが普及すれば、保護者が安心して利用できるはずです。防犯カメラの設置や子どもの事故防止マニュアルの整備など、トラブル防止策を明示することも大事なステップです。

多様なプランの可能性――“短時間だけ”“宿泊OK”“学童の延長”など

“いざ”のときに使うサービスといっても、ひとり親家庭の状況は実にさまざま。短時間利用や半日利用、夜間預かり、宿泊対応など、ニーズに合わせた柔軟なプランが望まれています。既存の学童保育の延長サービスや児童館での一時的お泊まりが整備されれば、急な出張や夜勤があっても乗り切れるでしょう。一部のNPOでは、子ども食堂と連携して夕食後に一定時間預かる仕組みを試験運用する動きも見られます。

行政に求められる“使いやすさ”――オンライン化とワンストップ窓口

制度はあるが使われない理由の多くが、手続きの煩雑さや情報不足。ここを改善するには、オンラインでの申し込み・申請の普及と、問い合わせ先を一元化したワンストップ窓口の設置が有効です。「一時保育の申請は福祉課、ファミサポ登録は子育て支援課……」と窓口がバラバラな自治体では、保護者がハシゴを強いられるためハードルが高まります。夜間や休日にも対応可能なコールセンターがあれば、働きながらでも利用検討がしやすくなるはずです。

ITで広がる可能性――アプリからリアルタイム空き状況が見える世界

ITを活用すれば、地域ごとの保育施設やシッターの空き情報をリアルタイムで見られ、予約や支払いまでワンストップで行えるシステムが実現します。すでに海外では、保護者と保育者をマッチングするプラットフォームが普及し、突発的なニーズにも対応する事例が増えています。日本でもスマートフォンひとつで“今すぐ預かってほしい”を叶えるアプリが拡大すれば、ひとり親の生活が大きく変わるかもしれません。

繰り返される“誰かに頼りたい”声――自由記述から読み解く

「一時的に預ける場所がないと、結局すべてを自分だけで抱えることになる」「実家が遠方で頼れず、夜勤は不可能に」など、自由記述には苦悩する親の姿がありありと浮かびます。他方で「一度利用してみたらすごく助かった」「費用がもう少し安ければもっと使いたい」という前向きな意見もあり、「適切な価格や仕組みがあれば積極的に利用したい」という潜在ニーズが確かに存在すると言えるでしょう。

今後のひとり親支援に向けた提言1:公的補助の拡充で費用負担を軽く――“予算こそ最大の壁”

調査の結果、圧倒的に多くの保護者が「料金がネック」と回答しています。ここを抜本的に解決するには、利用料を補助する仕組みを各自治体だけに任せず、国レベルで横断的に整備することが理想的です。一時預かりが労働力確保や児童虐待防止など、多方面の社会的利益を生むことを考えれば、思い切った予算投入も検討するに値します。例えば所得制限を外してより多くの家庭が利用できるようにすれば、ひとり親に限らず全世帯の子育て環境が底上げされるでしょう。

今後のひとり親支援に向けた提言2:地域連携で送迎を強化――“家から遠い”を言い訳にしない

少子化が進む時代だからこそ、子どもの預け先を分散配置するのは難しいかもしれません。しかし、少数精鋭の施設を活かすために送迎サービスや交通費補助を整える方法があります。市町村単位で巡回バスを走らせたり、NPOが運営する有償送迎ボランティアを育成したりといった実例はすでに存在しています。こうした取り組みを全国的に広げれば、広域に散らばるひとり親家庭でも利用のハードルを下げられます。

今後のひとり親支援に向けた提言3:スタッフの質を可視化する――“誰が見るの?”への安心感

信頼が得られないままでは、一時預かりサービスがどれほど低料金でも利用は伸びません。そこで、スタッフ研修の義務化や資格試験、認定制度などを導入し、一定以上のスキルを保証する仕組みが必要です。また、利用者同士が口コミや評価を共有できるオンラインプラットフォームを用意すれば、初めての親でも安心して予約できるでしょう。企業や団体も定期的に事故防止研修や救急対応の講習を行い、保護者の不安を軽減する努力を求められます。

今後のひとり親支援に向けた提言4:柔軟なプラン設計――“2時間だけ”も“宿泊OK”も選べる未来

調査からは、保護者が“使いたい時間帯”と“サービスが対応する時間帯”のミスマッチが大きいことが判明しています。短時間からフルタイム、宿泊まで幅広い選択肢があれば、職種やライフスタイルの違いにも対応しやすくなります。特に夜勤やシフト勤務がある保護者には、深夜や早朝の対応を行う施設が少ないため、工夫を凝らして補完する事業が必要です。

今後のひとり親支援に向けた提言5:デジタル改革で“一元管理”――予約・手続き・支払いをシームレスに

情報の分散や煩雑な手続きが、ひとり親家庭のサービス利用を阻む大きな壁となっています。国や自治体、NPO、民間企業が連携し、一時預かり関連の情報をまとめたポータルサイトやアプリを整備し、オンラインで予約から支払い、保護者同士の口コミ共有まで完結できる仕組みがあれば、利用者の心理的ハードルは格段に下がるでしょう。さらに、そのポータルと公的支援制度の申請を連動させれば、負担軽減と周知徹底が同時に実現します。

“ひとり親以外”にも広がる恩恵――子育ては社会全体の課題

実は、この一時預かりサービスはひとり親家庭以外にも効果を発揮します。共働き世帯や親族が遠方に住む家庭、高齢の祖父母と同居している家庭など、さまざまな人が「少しだけ子どもを見てほしい」という場面に直面するのです。もし国全体で一時預かりの環境が整えば、結果として労働力の維持や地域コミュニティの活性化、子どもの安全ネットワークの充実といった副次的効果も期待できます。

まとめ――“いざ”に迷わない社会をつくるために

本調査では、一般社団法人ペアチルが実施した「子どもの一時預かりサービスに関する実態調査 最終報告書」をベースに、ひとり親家庭が直面する現状や課題、そして改善に向けた提言をまとめてきました。調査の結果からは、以下の事実が改めて浮かび上がっています。

  • ひとり親家庭は気軽に助けを求める先が少ない
    親族や近所に頼れる人がいればそれに越したことはありませんが、単身赴任や都市部への移住、または実家との不仲など、事情はさまざま。気軽に頼れない状況に陥る家庭ほど、一時預かりサービスの重要度が増しています。

  • 高まるニーズと依然低い利用率
    一時預かりサービスの重要性は増しているものの、実際には「まだ利用したことがない」という家庭が7割を超えています。経済的負担や情報不足、信頼性の問題などが大きな要因です。

  • 公的補助と制度設計、サービス連携がカギ
    料金補助や送迎サービス、デジタル予約システムなど、行政・NPO・企業が連携して多角的に手を打てば、一気に利用環境が改善する可能性が高いことがわかりました。

結局のところ、子育ては保護者だけの問題ではなく、社会全体が支えていくものです。ひとり親家庭が経済的にも精神的にも安定して子育てをするためには、「いざというとき、子どもを安心して預けられる場所があるかどうか」が極めて重要な役割を担います。急な仕事でも断らなくて済むような環境があれば、ひとり親家庭の就業継続率も上がり、子どもの貧困リスクも軽減するでしょう。また、親がリフレッシュできる時間を確保することで、親子関係を良好に保つことも期待できます。

今後は本調査で提示されたデータを活かし、行政や民間サービス、NPOなどの多様なセクターが協働しながら、子どもの一時預かりサービスの普及と質の向上を目指していくことが不可欠です。すでに地方自治体のなかには、独自に無料チケットを配布したり、企業と連携して夜間保育や送迎を強化したりと、先進的な取り組みを進めている事例もあります。

ひとり親支援の現場では、どれだけ素晴らしいサービスがあっても「知られていない」「料金が高い」「利用条件が厳しい」といった理由で結局使われない事態が起こりがちです。逆にいえば、情報発信と利用促進策を徹底し、さらに利用料・利用条件の改善を行えば、急速にニーズが高まり、安定した利用が進む可能性も十分にあるでしょう。本調査が、そうした取り組みを促す一助となれば幸いです。

 

本調査のお問い合わせはメールかフォームにてよろしくお願いいたします。

E-mail : info@parchil.org

Form : https://forms.gle/oqg9gX8LVyZKDrEC6

 

本調査について:

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Policy Fundは、政策を軸にした社会課題解決を加速するための、政策提言への寄付基金です。

HP : https://policy.fund/


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この記事を書いたのは

ペアチルライターチーム

ひとり親限定のトークアプリ「ペアチル」ライターチームです。家計・仕事・子育て・家事など、ひとり親の方の生活に役立つ情報をお届けしていきます。

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